日本歴史訪歩① 風土伝承館杉浦医院
何百年と続く風土病に向き合った人達
かつて日本には山梨県甲府盆地を中心に原因不明の病が存在した。
この病は日本住血吸虫という寄生虫に起因する病気で、古くは戦国時代から甲府の民を苦しめていた。この病を日本住血吸虫症(地方病)と言う。
風土伝承館杉浦医院とは当時は未知の病であった地方病と闘った先人達の軌跡である。
杉浦医院では当時を昔のままで現在に伝えている。
筆者が過去とのつながりを感じたのは診察室の診察台である。
展示されている写真の中には患者がこの診察台に寝ているものもある。
筆者が手を置いた場所にかつては生死を彷徨う患者がいたのだ。
写真のスチブナールとは当時開発された地方病の特効薬であった。しかし、強い副作用や高額であったなど、人々を救うには当時の日本は貧し過ぎた。
ここで飼育されているのはなんと「カワニナ」である(なんでやねん!)。中間宿主であった「ミヤイリガイ」はいない。
宮入教授はこの貝に自身の名前をつけられたことをどう思ったのか、それは「ナナマキガイ」と呼ばせているあたり好意的には思わなかったのかもしれない。
最後に筆者が強調したい事が二つある。
一つは地方病を克服したのは日本のみである。
もう一つはこの未知の病を克服する上で重要な役割を果たしたのは、地方の現地人であった事である。
もちろん県外の多くの有志による協力なくして解決は不可能である。
それでも一住民に至るまでミヤイリガイ(ある意味で被害者と言える)の撲滅に努めた。
先人達が愛した土地にはそれを伝える人々と忘れまいとする意識が強く根付いている。